2015年07月27日

前回までは、竹内力ばりの渡世人さんのお話でしたが、
その当時、童子が気になって気になって止まなかった
竹内力とは正反対のような御人がいらっしゃったのを思い出しました。

今回は前回とは打って変って、その奇怪千万なる御人のお話です。

丁度、竹内力さん飯島愛さん絡みのトラブルがあった頃、
童子は大阪のとある会社に京都から通勤しておりました。

大阪は本町の近く。お昼になると、同僚達と連れだっては、
ビジネス街の定食屋さんや様々なレストラン街にと食事に行き、
結構値段の張るランチでワイワイと盛り上がっておりました。

ただし、前日深酒が続いて食欲が湧かない時は、
特に手の震えが始まったりしそうで危なそうな時には、
同僚にアルコール由来の振戦を感知されないよう、
適当な都合を作っては、一人で食事を取っておりました。

一人で良く通ったのが、心斎橋筋の商店街に近い松屋。
当時、牛丼が380円とか豚丼が280円位
だったような気がするが価格の記憶は定かではない。

童子は、どちらかというと牛丼よりも豚丼を好んでたようでした。
つゆだくにすれば、深酒で荒れた胃にも流し込む事ができたのです。

それに手が震えるので、児童のように割り箸を固く握りしめて、
丼を食台に置いたまま抱えて、口に掻き込むには最適であった。
なんとも、犬飯のような、情けない有様であったかもしれない。

そんな松屋を、深酒の折に、何度か訪れていた時に、
コの字型になったカウンターの童子の対面に、ある男の客が腰を下した。

男は席に着くや店員さんに、「白めしをお願いします。」と言って50円玉を渡した。
客は皆、席に着く前に自動券売機で食券を買うシステムになっているのであるが、
その男は、食券でなく50円玉硬貨を手渡した。
(おそらく、白ご飯だけのチケットはなかったのだろう。)
童子は、妙な客だなあと思い、それとなく観察していました。

ブラシで梳いた気配もない肩まで無精で伸びたような長い髪の毛。
中央で分けた頭髪の隅間から、やせ細った青白い風貌が窺える。
高校生が着るような白いシンプルなシャツは、洗濯はしていそうだが、
よれよれの襟際が擦れて、糸もほつれてるようだ。

なにか、ゲゲゲの鬼太郎に登場していた”ねずみ男”と
イエスキリストを足して二で割ったような。
いや三か四で割ったような。そんな感じの神か妖怪か釈然とせぬ面持ち。

店員は、男が常連客で慣れているのか、何の躊躇いもなく、
「あいよ!」と威勢良く、真白なごはんだけの丼をカウンターに通す。
その後で、そっと一杯の椀を男に差し出した。

あの過重労働で問題を起こしたすき家と違い、
松屋の店員さん逹は温情に厚かったのか、
白ごはん一杯しか頼まない客にも味噌汁の椀を付けてあげていたのです。

男は、白米の乗った器と味噌汁を前に、箸を取り出します。
その箸で、がっつくかと思いきや、
箸を横一文字に両手の指にはさむと、
手を合わせて合掌の型を造り、首を垂れて黙祷に入ったのである。

「いただきます。」と声を出すでもなく、黙祷は、1分近くも続いたのである。
両脇や近くの客は、いつもの事で慣れているのか、気にも留めない様子だが、
初めて出会った童子はびっくりこいてしまったのだ。

おそらくは、声にこそ出さないが、男の心中では、
「この世に生命(いのち)を授けていただいた、父よ、母よ、そして主よ。
 また、白米と味噌を育みたもうた農業従事者の方々よ。
 今日も、こうして食にありつけた幸せに感謝いたします。」
と唱えていたように、童子には聞こえた。(ホントかなあφ(.. ))

今時、こういう御方がいらっしゃるのだろうか。
黙祷から 覚醒し、目をしっかりとお開きになった御方は、
サービス品の紅ショウガをたっぷりと丼の上に敷き詰めて、
味噌汁一杯で食事を黙々と続けられるのであった。

貧乏とか節約と云うレベルを超越して、清貧という言葉が頭を過った。

当時は肉食派で(今でも)、日々、肉や魚と酒をかっ喰らい、
酒池肉林の境地にあった童子(それはないか(笑))には、
目の鱗が落ちるようなインパクトな出来事であったのだ。w(゚o゚)w

食べ掛けた、豚丼を食べる手も止めて、男を凝視していた。

御方は、感謝の気持ちが体に出ているような食べ方で
一食を終ると、もう一度軽く合掌を決めて席を立つや、
松屋の従業員一同に深々と御礼のお辞儀をして、
すっと、店の外へ消えて行った。

その後も、ビジネス街のサラリーマンが集う同じ時間帯に松屋に行けば、
大抵はその御片の毎回同じ食事風景を拝めたのである。
毎回毎回、牛丼や豚丼やましてや牛丼セットなどというメニューには
見向きもせずに、ひたすら、白米一杯の丼と味噌汁と紅ショウガだけ。
一回たりと他の品目を目にした事はなかったのです。

ある日、深酒が入りすぎて牛丼を残した童子と、彼の御方は、
店を出るタイミングが同じで、出口で鉢合わせとなったのである。

ふと、好奇心旺盛な童子は、
一体全体、この御方は、どういう職種の御人なのであろう。
普通の会社のサラリーマンじゃあないよな。公務員でもないような。
なにか得体の知れない団体とか。それとも神社仏閣の関係とか。
うーん。と興味が鎌首を擡げ、やっ!確かめて見ようという冒険心が。

悟られぬよう、10mばかり後を、少年探偵団の如く、こっそりと尾行を開始した。
決して、童子には、ストーカーの趣味はありません。
単なる高貴(?)な好奇心。

ところが、御方は白米しか食していないのに、やたらと俊足なのである。
路地を曲りくねり、狭い通りに入って行くうちに、
童子の鈍足は遂に相手を見失った。
おかしいな。と思うほどの素早さと消え方であった。(゚д゚)、

そして、不思議な事に、その事件が有ってからというもの、
松屋に行っても、二度と、その御方に出会う事はありませんでした。
ひょっとして、やはり、どこぞの妖怪であったのか、
それとも、吉野家のサービスに鞍替えされたのか。
今となっては、御方の正体と、消失の真実は謎に包まれたままです。(´・ω・`)


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この記事へのコメント

1. Posted by るに   2015年07月27日 17:39
私もアルコール依存性です。
寝起きから寝るまで飲みます。
ただその間に飲みながらも家事等はしてます。
それでもダメなのでしょうか。
自分の身辺をちゃんとやれるのならば、いいのではないかと思ってしまいます。
2. Posted by めたぼ侍   2015年07月27日 21:24
吉野家のアルバイトをしてたとき、日本酒熱燗だけというお客さんがいました。あの人も妖怪だったのでは?と今、思います。
3. Posted by ASAS   2015年07月29日 00:58
私もアル中です。
SEXとアルコールは、朝が気持ちいいと感じたときがアル中を自覚したときでした。(朝のSEXの良さははもう少し若いころから自覚しておりましたが)
今は海外で仕事をしていますが、いつまで持つかよくわかりません。
4. Posted by 酒呑童子   2015年07月29日 23:40
るにさん
初めまして。
ダメとか、いい、とかの話ではないように思います。
一生呑兵衛でも、
周りにも迷惑を掛けず、健康も損なわずに
過ごせる人もいらっしゃるでしょう。
そうであるなら、断酒の必要性はありません。
そうでないなら、どうしますか、と言う事ですね。
5. Posted by 酒呑童子   2015年07月29日 23:49
めたぼ侍さん
こんばんわ。
私も妖怪にでも成りたいな、
なんて昔はふと思ったりしたものです。
「おばけにゃ学校も試験も何にも無い♪」
悩みも苦労も何にも無い・・・いいですね。(笑)

6. Posted by 酒呑童子   2015年07月30日 00:02
ASASさん
初めまして。
SEXはいざ知らず、朝酒は間違いなくアル中の入口です。
稚記事『朝酒はアル中の始まり』をググって下さい。
酒呑童子格言集がTOP表示されるようになりました。
7. Posted by でるでる   2015年08月02日 05:43
童子様いつも楽しく拝見させていただいております 報告程度のコメントで申し訳ありませんが一昨日断酒会に初参加してきました 来週も行こうと思います また色々コメントというかご相談させていただきたく思います よろしくお願いします
8. Posted by 酒呑童子   2015年08月02日 14:56
でるでるさん
こんにちは。
断酒会、初参加ですかあ。
仲間の輪が拡がると良いですね。
毎週通う事が肝要なんですよ。
私は自助会に毎週参加する代わりに、
断酒ブログを毎週書いて来たんですから。
9. Posted by 昼の月   2015年08月02日 18:07
童子さん、暑いですねぇ~。
昔は、こんなに暑かったのかしらと
いぶかしく思うほど、身体に堪えますね。

松屋の御方、きっと、心斎橋の聖フランチェスコじゃないでしょうか?
何か童子さんに伝えたいことがあったのでは(笑)。
でも、白飯が50円というのは、初めて知りました。
タメになります…。

でるでるさん。よかったです。すごい大きな一歩ですね。
童子さんもおっしゃっているように
断酒会続けて下さいね。軽い気持ちで…。
止めても、また、やり直せばいいと思います。

またまた、横レス失礼しました。



10. Posted by 酒呑童子   2015年08月03日 11:48
昼の月さん
こんにちわ。
最新ブログ記事にアップしてますとおり、
この猛暑を切り抜けるべく努力しております。
しかし、考えてみれば、幼少の時分は、
エアコンなどはなく、扇風機すら貴重な機械。
文明の利器で現代人の体力は弱ってる気がします。
原始人に回帰してみます。(笑)

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