2015年07月10日

先般のシリーズ『春先の憂鬱・その』の続きとなりますが、
酒呑童子の伝記を著するつもりではないので、時代に沿って記述するのは止めにして、
シリアルな時系列ではなく、その時々に思いだした出来事を、
エポックメイキング(使い方が違うような。。。)的に記して行こうと思います。

さて、前回の記事から数年後、いよいよアル症が悪化して、
家族も、たまりかねて別居を提案してきたあたりからの話です。

週末になると、金曜日の夜から連続飲酒に陥り、
自分の部屋に籠りきって、夢うつつ、誰も居ない空間を見上げては、
笑いかけたり、罵声を浴びせたりしている状態に、
家族も耐えられなくなったようでした。(T_T)

そして、ある事柄が致命的な引き金となってしまい、
童子が上海に長期出張している間に、電話での売り言葉に買い言葉によって、
本人不在のままに、童子の全ての持ち物が別居に搬送されてしまったのでした。

近くの上新電機からも、独り身に適したような仕様の
電化製品一式も丁寧に送り込まれておりました。
テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロなどなど。

京都駅の南方近くに別居を構えさせられた童子は、
独り身になれば、淋しさ半分、嬉しさ半分、
反省するどころか、いよいよ思う存分、誰の気兼ねなしに
飲める環境を与えられたと、喜び勇んで毎晩飲み歩いておりました。(☆゚∀゚)

住居近くの京都駅周辺か、足を延ばして三条木屋町界隈にも出没してました。
京都駅の周辺は、表玄関方面でなく、九条界隈が多かったのですが、
左京区や北区に比べると、柄の悪い客層が多かったように思います。

毎夜、毎夜、夜の棲家を探して、
そこらじゅうの飲み屋を徘徊しておりました。

その中のひとつ。
東九条近辺にあったコレアンバー。
その店へは、確か二度目の訪問だったような気がします。

童子は、休日で昼間から既に出来上がった状態でしたが、
少し空腹も催して、何となくそのコリアンバーに足が向きました。

まだ時間が早く、客は童子一人。
本場風の冷麺(ハングルでは、レンミョンという)とキムチをたいらげ、
ジンロも程好く回って来た頃合いで、
店のオモニに、さあ一曲とマイクを差し出されます。

昨夜の三条木屋町での出来事を思い出して、
にんまりと一人悦に行ってマイクを握りしめます。
そんなら、十八番中の十八番と行くかあ。(。・ω・)ノ゙


というのは、前夜の金曜日、木屋町まで繰り出して、結構大きなバーで飲んでいて
とある一曲を唄い終わると、会社員風の若い男が、ビール瓶とメモ帳を片手に、
童子のテーブルに擦り寄って来て、膝まづく格好で脇にしゃがみこむと、
「すみませんが、今の曲名を教えて下さい。いやあ、感動しました。私も練習します。」
と目を潤ませるのであった。

あの、かつて渋い人気のあったハマコー(暴れん坊)ではなくて
ハマショーの名曲。『もうひとつの土曜日』(章末にリンクあり)
童子は非常に良い気分で帰路に着いたのでありました。


で、早速、イントロから気分良く入っていって、
前半の32小節程を見事に(自分では)歌い終わった時、
突然入口のドアが開いて、がやがやと数人の客が。

童子は、カラオケのビデオ画面に釘づけで、
客には目もくれずに、曲の後半に入ります。

「君を想う時、喜びと悲しみ~♪」

後から来た客は、格子の仕切りで隔てられた畳間座敷に座り込み、
すでに多少は飲ってるようで、
「ウワッハッハ。ゲタゲタ。ゲタゲタ。」
女性も混ざってるようで
「きゃぁあ~」とか、ふざけ合ったような叫び声も。

最初は、我慢をしておりましたが、あまりの騒々しさ。
木屋町では、客が聞き惚れてくれた情景を思い返せば、
なんという品のない店と無礼千万な客層であることか。(`ε´)

先客が歌ってるのも、全く無視したかのような傍若無人ぶり。
童子は、次第次第に限界に達して行きました。(`・д・´)
得意の最後のサビの部分に差し掛かったとき、

「きゃ~。やめてんかあ。」と、また女の馬鹿な嬌声。

流石の童子も遂に切れてしまったのだ。
マイクをテーブルに大きく放り投げて、

「じゃっかましいやい!」(゚皿゚メ)

自分でもびっくりするほどの大声。
最後の盛り上がりの曲のフレーズのかわりに、
怒声を発してしまったのです。

一瞬、店内は水を打ったような静けさに覆われました。
その沈黙が、なにか不気味さをも醸し出します。

(ちょっとやりすぎたかな。)

数秒の沈黙が過ぎ去って、マイクを再び拾い上げようとすると、
その格子に脊を向けて、隠れて見えなかった男が、すっと立ち上がった。
後ろ向きのまま、土間に下りようとするではないか。
足元を見れば、店のサンダルじゃない。雪駄が揃えてあった。

それをつっかけて、ゆっくりとこちらに振り向いた。
真白いズボンに、ど派手なピック色のジャケットを、
腕を通さず肩に引っ掛けている気流し風情。
そう、フウテンの寅さんの着衣スタイル。

パンチパーマ。三十代後半。難波金融の竹内力の印象が少々あった。
胸元の金色の派手なネックレスが鈍く光る。
素人とは違う目の睨みは、まさしくその筋のものだ。

や、やばい。Σ(=゚ω゚=;)

ゆっくりと童子の席に向かって来た。
童子のテーブルの前に止まり、
舐めるように童子の風体を検分すると、

「兄さん。ずいぶんと機嫌が悪いようじゃのう。」

「い、いや、とくに。」

「ちょっと、表へ出てくれへんか。」

(まずい事になったなあ)

仕方なくドアを開けて、店の外の路上へ出る。

「やめときやぁ~」

背後から、嬌声を上げていた女性が笑いながら声を上げる。
本当に止めろという真剣味はさらさらない。

やめとけとは、何を止めるのだろうか。
童子の頭の中は、数分後の未来を想像して混乱していた。
五臓六腑ボコボコに血祭りされるという事なのかな。

童子を追って外へ出てきた男は、
いきなり童子の胸倉を掴んだ。

「あまり、見慣れんやっちゃのう。どこのもんじゃ。」

「いや、最近引っ越して来て、どこのものでも。。。」

こういうシチュエーションでは、小心者の童子には、
反撃の技術は悲しいほど備わってはいないのである。

小学生時代は、ドッジボール。縄跳び。ビー玉。コマ回し。
少しだけ少年野球(ゴロもフライも苦手なのでキャッチャーの補欠)。
中学校では卓球部中途退部。高校では科学クラブ。大学では麻雀一筋。
この経歴では、とてもじゃないが修羅場に適応できる技能には結びつかない。(´・ω・`)

さりとて、50m走8秒台後半の俊足(?)では、
しかも酒が入って、ふらついてる身体では、
思い切りダッシュしてトンズラするという芸も生まれては来ない。

「すんません。ちょっと気が立ってたもんで。」

「おんどらりゃあ!それですむと思うてんのか?」

「いや。あの。その。(それで済まないとは一体・・・・)」


(次回に続く)


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※youtubeからの借用『もうひとつの土曜日



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この記事へのコメント

1. Posted by めたぼ侍   2015年07月10日 13:12
気持ちよく歌っていたらとんだ顛末になったわけですね。
続編楽しみです。もう春先では、ありませんが、思い出すだけでも憂鬱でしょうね。
2. Posted by 酒呑童子   2015年07月12日 20:52
めたぼ侍さん
こんばんわ。
若気の至り・・・で済む歳ではありませんでした。
酒は憂鬱を跳ね返すのではなく、
荒み具合を加速させる作用もありますね。
面目ない事です。
3. Posted by でるでる   2015年07月13日 17:18
童子様いつも拝見させていただきありがとうございます 再び連続飲酒となりました ノンアルコールで満腹にしてやりきっていたつもりですが 居なくなりたいです すみません 変なコメント 結婚や子供に妻に申し訳ないばかりです やめられるのでしょうか
4. Posted by 昼の月   2015年07月14日 17:21
童子さん、こんにちは。
奥さまが、取りあえず、電化製品一式を送られていたというのは、
本当にお優しいお人柄と思われます。

で、この顛末の行く末ですが、
さてさて…取りあえず童子さんが無事なので、
大丈夫ですよね。予定調和なのでしょうか?

私は、吉祥院に住んでいたこともあるので、
懐かしい地名ばかりです。
続編を楽しみにしています。

ps.でるでるさん、スリップしたからといって、
ちゃんと、一定期間、断酒できていたじゃないですか?
all or nothing じゃないと思います。
横レス失礼しました。


5. Posted by 酒呑童子   2015年07月14日 21:43
でるでるさん
昼の月さんのコメントのとおりです。
1ヵ月止めれてた実績があるなら、
スリップしても、次は、1ヵ月+1日をクリアしましょう。
私が止められたんですから、止められますよ。
スリップ何回しても仕方ありません。
止める気があるだけ、昔の私に比べれば、まだましです。
6. Posted by 酒呑童子   2015年07月14日 22:06
昼の月さん
こんばんわ。
吉祥院ですか。
東寺に近いですね。よく、弘法市に行ったものです。
伏見稲荷にも。懐かしい日々です。
なかなか京都に寄れませんね。
何時も素通りで。。。
時間が出来たら、今度は住人ではなくて、
観光者の立場で、ノスタルジックに浸って見たく。。。
そんな日がくるのかなあ。ワーカーホリックの身に。
7. Posted by でるでる   2015年07月15日 08:32
童子様 昼の月様 温かいお言葉ありがとうございます

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